ついに登場!NCプログラム生成の完全自動化を実現する理想のシステム「ARUMCODE」
アル厶が開発、ジーネットが販売を手掛ける「ARUMCODE(アルムコード)」。2021年9月にリリースされた本システムは、3次元CADの形状データを解析から加工に必要な工具・切削条件の選定、加工経路の生成、NCプログラムの作成までを自動で実行。従来のCAD/CAMの概念を超えた、まさに次世代のNCプログラム生成ソリューションです。
「CADデータを読み込ませるだけで、自動でNCプログラムを作って欲しい」ー。CAD/CAMを使ったことがある方なら誰もが一度は思い描くこの技術が、AIの活用によってついに実現。NCプログラム作成における理想をまさに具現化した「ARUMCODE」の概要をレビューします。
Contents
特徴
AIがNCプログラムを自動生成
「ARUMCODE」では、最初に3次元データの高速形状確認を行います。3次元CADデータを選択して「ARUMCODE」にドラッグアンドドロップすると、CTスキャンのように3次元データをZ軸方向にスライスしていくイメージで形状を解析していきます。
3次元データの解析後は、形状に対してネジやリーマといった加工方法の種類の識別と割り当てを行います(ちなみにこの技術、アル厶が特許を取得しています)。その後はあらかじめ登録されている工具情報をもとに、AIが形状にあった最適な工具と切削条件を選定。最適解の工具経路が自動計算され、NCプログラムを生成します。
オペレーターに渡す作業指示書や工程表、加工原価の見積もこのタイミングで同時に生成されます。
ここまでの流れの中でオペレーターがやることは、3次元データをドラッグアンドドロップするだけ。つまり、3次元データさえ用意すれば後は「ARUMCODE」におまかせでオッケー、というわけです。
NCプログラムが完成したら、工作機械へ転送して加工を開始します。「ARUMCODE」は工作機械メー独自のGコードやMコードにも対応しているので、異なる複数のメーカーの機械をお使いの場合でも問題なく運用が可能となっています。
なお、2024年1月現在では「ARUMCODE」が読み込める3次元データの形式はSTLのみですが、この度「CATIA」や「SOLIDWORKS」の開発元である「ダッソー・システムズ」とAPI契約を締結。現在開発が進められており、2024年内にはSTEPやIGESなどの中間ファイル形式を取り込むことが可能になる予定です。
選べる2種類のライセンス形態
現在、「ARUMCODE」は2種類のライセンス形態で販売されています。
通常版となる「ARUMCODE」はライセンス販売、つまり買い切り版の形で提供されますが、ここに新しく「ARUM Factory365」というクラウド版のサービスが加わりました。
「ARUM Factory365」は月額35,000円ほどで利用できるサービスとなっており、通常版の「ARUMCODE」と比較して「初期投資を削減」「保守メンテナンス料が不要」とコスト面で大きなメリットがあります。
さらに「ARUM Factory365」ならではの機能として、複数のCADモデルを同時に処理する「並列演算」が非常に効果的です。「ARUMCODE」では、選択した複数のCADモデルを順番どおりに処理していくのに対し、「ARUM Factory365」では選択したモデルを同時に処理します。
「並列演算」は複数の異なるCADデータに対するNCプログラムの作成を大幅に削減するだけでなく、処理するデータ量の肥大化に伴い、限界に近づきつつあるパソコンを演算処理から解放できるというメリットを同時にもたらしてくれます。ハードウェアのスペックに依存しなくても良くなるため、パソコンの代わりにタブレットを使ってNCプログラムを生成する、といったことも可能です。
NCデータ生成を自動化する仕組み
「ARUMCODE」および「ARUM Factory365」では、NCプログラム生成時におけるAIの分析手法として「線形回帰」が用いられています。これは、バラバラになっているデータから特徴を掴み、関数のグラフに近似するというものです。
ここで用いるデータは、グループ企業であるオーエスイーで実際に加工を行った切削条件がベースとなっています。同社がこれまで培ってきた知見、そして様々な工具を使用して繰り返し行ってきたテストカットのデータを融合して導き出した切削条件をもとに、「線形回帰」の分析手法を用いて切削条件アルゴリズムを生成しています。
PRポイント
完全自動化成功事例プロジェクト
「ARUM Factory365」のさらなる普及を加速させるべく、販売元のジーネットでは「完全自動化成功事例プロジェクト(CSP)」を2023年10月からスタートさせています。
本プロジェクトはユーザーとアル厶、ジーネットの三社間で秘密保持契約(NDA)を締結した後、ユーザーの図面をもとに「加工実績分析」を実施。過去複数年分の加工実績をもとに、「どの加工領域が自動化に繋げやすいか」「収益につながりやすいか」を徹底的に分析し、ユーザーにフィードバックします。その後、分析結果をもとに話し合いが進められ、ユーザーごとに開発テーマを決めていくという流れです。
決定した開発テーマに基づき「ARUM Factory365」を実際に使っていきながら様々な検証とフィードバックを重ねていき、完全自動化を目指すというのが「完全自動化成功事例プロジェクト」の全体像です。ちなみにこの「完全自動化成功事例プロジェクト」ですが、「ARUM Factory365」ユーザーであれば無償で利用可能です。期間は8ヶ月と非常に長期で、かなり手厚いサポートだと言えるでしょう。
さらに進む、完全自動化にむけた開発計画
「ARUMCODE」および「ARUM Factory365」は、さらなる自動化を推し進めるべく、ハイペースに開発が進められています。
■マシニング加工
現在の「ARUMCODE」および「ARUM Factory365」は、2軸加工からかまぼこ形状やテーパー形状のような2.5軸加工、ヘリカル加工に対応しています。割り出し加工は90度割り出しが現状可能ですが、今後は1度単位での割り出しに対応する機能が追加される予定となっています。
また、鋳造業界向けの機能として、元となるCADデータと鋳造品のCADデータをそれぞれ取り込むと、差分を判断して差分の分だけNCプログラムを生成するといったモジュールも開発中となっています。
■旋盤加工
旋盤加工モジュールは2024年内のリリースが予定されています。
その他にも、将来的にはマシニングの同時5軸加工や研削盤モジュールのリリースも予定されています。
■永久学習(物性値学習)
加工するごとにその物性値を学習するサイクルを構築することで、自動的にチャンピオンデータでの加工を実現するというものです。例えば、環境温度の変化に対して自動でプログラムの補正を行うといったことも可能になり、加工すればするほどシステム側が精度の高いNCプログラムを生成してくれるようになります。今後の開発次第になるとのことです。
■クラウド制御・機械連携「MMOP」
「ARUMCODE」および「ARUM Factory365」と並行して開発が進められている完全自動化マシニングセンタ「TTMC」。これらを組み合わせることで、NCデータ生成から加工開始までを完全自動化する「MMOP(Massively Multiplayer Online Production)」というプロジェクトが進行中です。
「MMOP」は、「ARUMCODE」および「ARUM Factory365」でNCデータを生成後、国内や海外の拠点に配置された複数の「TTMC」の中から、どの機械で加工するのがもっとも効率的かをシステムが自動で判別して振り分けるというものです。ダウンタイムを削減するだけでなく、高騰する物流コストの削減にも大きく寄与します。なお、「MMOP」は2025年までの完成を目指し開発が進められています。
CAD/CAMユーザーの長年の夢とも言える『完全自動のNCプログラム生成』をついに具現化した「ARUMCODE」。人手不足が叫ばれる昨今、NCプログラムの生成が無人化できる時代が確実に近づいてきている雰囲気を感じさせます。メカ的な自動化だけでなく、NCプログラムの生成というソフト面での自動化、ぜひ取り組んでいきたいテーマの1つと言えるのではないでしょうか。