放電加工機とは?放電エネルギーで高硬度材も精密に加工する工作機械を解説
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放電加工機ってどんな機械?何ができる?
難削材を電気エネルギーで高精度に加工する工作機械、「放電加工機」について解説していきます。
「旋盤」や「マシニングセンタ」が刃物(工具)でワーク(材料)を削っていくのに対し、「放電加工機」は電気エネルギーによって加工する機械です。本サイト内の【金属加工で使う工作機械の基本の「キ」】でも触れておりますが、電気エネルギーを利用して材料を少しずつ溶かす、または糸ノコで切断するように加工を行っていきます。放電加工(または放電加工機)は英語で「Electrical Discharge Machining」となることから、その頭文字を取って「EDM」と表現されることもあります【例:ワイヤー(ワイヤ)EDMなど】。
放電加工機の加工エリアにはワークの熱膨張や変形を防ぐと同時に、除去した材料の排出性を良くするため、加工液として純水または油が張られています。加工方法は電極(またはワイヤ線)とワークとの間に高電圧をかけて放電させ、発生した火花による熱でワークを溶融・蒸発させることでワークを除去していきます。電極やワイヤ線はワークには直接触れない非接触の加工のためワークへの負荷が少なく、特に薄板状のワークで発生する歪みや割れといったリスクもありません。また、電気を通す材質のワーク(導電体)であれば、一般的に難削材と呼ばれるような非常に硬い材質も加工でき、さらに切削加工に比べて加工精度が高く、滑らかな加工面が得られるというメリットがあります。
放電加工機にはどんな種類がある?
放電加工機には主に「形彫り放電加工機」「ワイヤ放電加工機」「細穴放電加工機」の3種類があります。旋盤やフライス盤のように作業者のマニュアル操作によって加工するタイプのものも存在しますが、現在はNC制御(数値制御)による機械が主流となっています。
ここでは代表的な放電加工機の種類を見ていきましょう。
形彫り放電加工機
形彫り放電加工機は、電極の形状をワークに転写するように加工する工作機械です。電極の形状どおりにワークを彫り込んでいくイメージです。電極は、主に銅やグラファイトなど導電性のある材料で作られます。電極の形状次第で様々な加工を行うことができるので、切削では難しい複雑形状の加工、非常に硬い材料の加工で大活躍します。
一方で、形彫り放電加工機にもデメリットはあります。
まず、機械の特性上、ゴムやガラスなど導電性のない材質(絶縁体)は加工できません。そしてワークを少しずつ溶かしながら加工していくため、切削加工と比較して加工速度が遅い、という点が挙げられます。
ワイヤ放電加工機
ワイヤ放電加工機は、真鍮等のワイヤ線に電流を流し、加工物を放電スパークによって融解しながら切断する工作機械です。放電する距離をNCで制御することで、任意の寸法で加工することができます。糸のこで材料を切断したり切り抜いたりするようなイメージの加工です。徐変テーパーや上下異形状など、切削加工では難しい形状も高い精度で加工が行えるほか、導電性のある金属であればどんな硬い材料も加工できるため、素材の厚み等に関わらず加工が行えます。また、マシニングでは固定が難しい薄板材の切断や、金属3Dプリンタの造形品を土台から切り離すといった工程でも活躍します。
一方、ワイヤ放電加工機のデメリットとしては、ワイヤが垂直方向に張られているため、ワークを水平方向に切断するといった加工はできません。また、ワークの底面の加工も不向きです(この場合は形彫り放電加工機の出番となります)。導電性のない材質は加工できなかったり、加工時間が長いため、量産加工には向いていないといった点は形彫り放電加工機と同様です。
細穴放電加工機
非常に細長いパイプ電極や丸棒状の電極を利用し、小径・深穴の穴加工を行う際に活躍する放電加工機です。ワイヤ放電加工機のスタート穴をあける際によく使用される機械ですが、その特性からマシニングでのドリル加工では難しい小径の深穴加工や、難削材で加工された部品の冷却穴加工などでも活躍しています。
放電加工ではバリが出ないという特長があるため、小径の穴あけも非常に高精度に加工できるというメリットがあります。
主な放電加工機メーカー
現在、放電加工機を製造している主な工作機械メーカーです。
あ行
株式会社アイトロニクス
株式会社アステック
イースタン技研株式会社
株式会社エレニックス
か行
さ行
三光科技股份有限公司
GFマシニングソリューションズ株式会社
西部電機株式会社
株式会社ソディック
た行
な行
株式会社日本放電技術