旋盤とは?丸材加工に欠かせない工作機械の代表機種を解説

旋盤ってどんな機械?何ができる?

工作機械の代表的な機種の1つ「旋盤(せんばん)」について解説していきます。
本サイト内の【金属加工で使う工作機械の基本の「キ」】でも触れておりますが、「旋盤」は回転する材料(ワークや被削材とも呼ばれます)に刃物(バイト)を当て、材料を削っていく工作機械です。

旋盤での加工の様子を普段の生活で直接目にする機会はなかなかありませんが、加工中の動きは「こけし作り」「鉛筆削り」「ろくろ」「りんごの皮むき」など様々な例えで表現することができます。これらはいずれも対象物を回転させ、そこに刃物や人の手を当てることで「削る」「皮をむく」「形を整える」といった動作が入って目的の形状に仕上げていますよね。

旋盤で行うことができる加工としては、ワークの外周を削る「外径加工」、ワークを円すい状に削る「テーパー加工」、ドリルによる「穴あけ加工」、ドリルで開けた穴をさらに大きく広げる中ぐり加工などの「内径加工」、ねじ山を切る「ねじ切り加工」、ワークに溝を彫る「溝加工」、不要な部分を切り落とす「突切り(つっきり)加工」、ワークの端の平面部分を削る「端面加工」などが挙げられます。

刃物を使ってワークを削っていく加工を「切削加工(せっさくかこう)」と呼びますが、その中でも旋盤で行う加工は一般的に旋削加工(せんさくかこう)と呼ばれます。旋削加工の場合、ワークを「チャック」と呼ばれる保持具に固定し、ワークを回転させながら削っていきます。そのため、円筒形状のワーク(丸材)が多く使用されます。

旋盤にはどんな種類がある? 

旋盤は数ある工作機械の中でも代表的な機種の1つですが、ひと言で旋盤と言っても実に様々な種類が存在します。ここでは代表的な旋盤の種類を見ていきましょう。

汎用旋盤(普通旋盤)

最も一般的な旋盤です。すべての作業がマニュアルで、作業者がハンドルなどを操作して刃物を動かしたり、刃物を変えたりしながら加工を行います。

作業者のスキルによって仕上がりの精度に差が出る機械ですが、まだまだ現役で活躍している製造現場も数多くあります。機械の特性から、試作品や特注品など1品物の加工に向く機械とされています。

また、工作機械の基礎を学ぶ際にも使用される事が多く、工業高校や高等専門学校、大学、各種職業訓練校でも汎用旋盤を目にする機会があります。

NC旋盤

汎用旋盤(普通旋盤)がすべてマニュアルで加工を行うのに対し、NC旋盤はオートマチックに加工を行う機械です。

NC(Numerical Control)装置にワークの回転速度・刃物の位置・移動量・移動速度・刃物の種類などをプログラムすることによって、機械側が自動で加工を行います。一度プログラムを作成してしまえば、以降は同様の手順で機械が加工を行うため、作業者のスキルに依存すること無く安定した品質の製品が製造できます。このためNC旋盤は大量生産に向く機械であり、現在国内で製造されている旋盤は、その大半がNC旋盤です。

ちなみに、近年のNC装置はコンピュータ制御によるものが多く、NCの頭にCがついて「CNC(Computer Numerical Control)」と表記することもあります。このため、NC旋盤はCNC旋盤と表記されるケースもありますが、現在ではこれらの差はほぼ無く、同じ意味として使われていると考えて問題ありません。

NC自動旋盤(NC自動盤)

「自動」と名の付く通り、加工するワークが自動で供給され、連続して同じ部品の加工が可能な旋盤です。特に小型で精密な部品を加工するのに向いており、ワークの供給から加工までを人手をかけず自動で行うため、「自動旋盤」と呼ばれます。

NC旋盤は通常、1つの部品の加工が終わったら作業者が部品を取り外し、新しいワークに付け替える必要があります。一方、NC自動旋盤は「バー材」と呼ばれる長い丸棒状のワークを使用し、1つの部品の加工が終わったらワークから部品を切り落とし、そこからトコロテンのように押し出されたワークをまた加工する、という流れです。金太郎飴のように同じ形状の部品が次から次へと加工されていくのをイメージしてもらうと良いかもしれません。

NC自動旋盤には、大きく分けて「主軸台移動形(スイス形自動旋盤)」と「主軸台固定形」があります。
主軸台移動形はワークが固定されている主軸が移動し、固定されている刃物に近づいて加工するタイプの機械です。元々は腕時計部品の大量生産を行うためにスイスで考案された機械のため、「スイス形自動旋盤」とも呼ばれています。「ガイドブッシュ」というワークの保持具を使うことで、ワークを長く突き出した状態でもガイドブッシュがワークを支えることで、ワークのたわみや加工中のビビリを抑えて高い精度で加工が行えます。なお、こうした機械の特性から、細くて長い部品の加工で広く利用されています。

一方の主軸台固定形は、刃物が移動して材料に近づき加工するタイプの機械です。通常のNC旋盤と同様の加工方式となっています。こうした機械の特性から、太くて短い部品の加工で広く利用されています。

加工する工具を取り付ける刃物台にも種類があり、髪をとかす「くし」のように横方向へ一直線に工具が配置された「くし刃刃物台」と、「タレット」と呼ばれる回転機構の円周上に複数の工具が配置された「タレット形刃物台」があります。くし刃刃物台は工具交換時のスピードや刃物台をコンパクト化できるという点に優れ、タレット形刃物台は工具収納本数の多さや工具同士の干渉が発生しづらいといった点に優れています。

立旋盤(ターニング)

通常の旋盤は材料と刃物が水平方向(横向き)に取り付けられているのに対し、これらが垂直方向(立向き)に取り付けられているのが立旋盤です。

垂直に取り付けられていることで材料が重力による影響を受けないため重心がズレにくくなる特性があります。大きく重量のある材料の加工する際に使用されることの多い旋盤です。「ターニング」とも呼ばれています。

タレット旋盤

「タレット」と呼ばれる回転機構の円周上に複数の工具を配置し、タレットを旋回させることで加工工程ごとに使用する工具を交換できる旋盤です。1回の加工ごとに工具を付け替える必要がないため工具交換に必要な時間を短縮することができ、加工の効率化が図れます。

Machining center with CNC with display

正面旋盤

「面盤」というチャックよりも大きい保持具にワークを取り付け、主にワークの正面(端面)を削る機械として利用される旋盤です。通常の旋盤よりも大きなサイズのワークを加工する際に使用されます。

卓上旋盤

テーブルなどの作業台において操作が可能な小型の旋盤です。汎用旋盤をコンパクトにしたようなイメージの旋盤で、通常の旋盤では小さすぎて加工が難しい小物部品の加工などに使用されます。「ベンチレース」とも呼ばれています。

複合旋盤(複合加工機・ターニングセンタ)

旋盤が持つ旋削機能と、マシニングセンタが持つ切削機能の両方を併せ持った機械です。かつては旋盤をベースにした機械が多かったことから「複合旋盤」と呼ぶケースが多かったのですが、現在は「複合加工機」「ターニングセンタ」「マルチタスキングマシン」とも呼ばれています。

工作機械メーカーごとに使われている名称が様々ではありますが、一般的にはタレット上にドリルやエンドミルなどの回転工具を取り付け、Y軸やC軸制御によって端面方向や垂直方向から回転工具で加工が可能な機械を「ターニングセンタ」、傾斜軸となるB軸を制御し、斜め方向からの位置決め(割り出し)加工や各軸を同期させた同時5軸加工が可能な機械を「複合旋盤」「複合加工機」と呼ぶことが多いようです(最近ではマシニングセンタに旋削機能を付加した複合加工機も数多く登場しています)。

旋削と切削の異なる工程が必要な部品を加工する場合、通常は旋盤とマシニングセンタ(もしくはフライス盤)の2台の工作機械が必要となりますが、複合旋盤であれば1台で対応できます。省スペース化・工程集約・製品精度の維持という多くのメリットがあることから複合加工機を導入するユーザーは拡大傾向にあり、複合加工機を生産する工作機械メーカーも同様に拡大しています。

主な旋盤メーカー

旋盤は多くの工作機械メーカーが主力として生産している工作機械です。

あ行

株式会社池貝
株式会社エグロ
有限会社エスアンドエムマシナリー
株式会社オーエム製作所
株式会社大垣鉄工所
オークマ株式会社

か行

株式会社唐津プレシジョン
株式会社神崎高級工機製作所
株式会社北村製作所
株式会社キリウテクノ

さ行

株式会社サイダ・UMS
株式会社シマダマシンツール(旧・株式会社嶋田鉄工所)
シチズンマシナリー株式会社
芝浦機械株式会社
スター精密株式会社
西部電機株式会社
株式会社西部ハイテック

た行

株式会社タカハシキカイ
高松機械工業株式会社
株式会社玉木鉄工所
DMG森精機株式会社
大日金属工業株式会社
株式会社TAKISAWA
株式会社ツガミ
東台精機股份有限公司

な行

中村留精密工業株式会社
日精ホンママシナリー株式会社
野村DS株式会社

は行

株式会社長谷川機械製作所
株式会社FUJI

ま行

株式会社光畑製作所
村田機械株式会社

や行

ヤマザキマザック株式会社

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