意外と知らない!自動化ロボットを活用するためのセンシング技術について

人手不足が深刻化する現代において、製造業界では「自動化」が大きなトレンドとなっています。
そして、そこには必ずといっていいほど多種多様なロボットが導入され、24時間体制で稼働しています。
しかし、ロボットを使った自動化システムは、決して簡単に構築できないのが現状です。そして多くの企業が直面する大きなハードルのひとつに、「ロボットを使いこなすためのセンシング技術の理解」が挙げられます。
今回は、ロボットを使いこなすためのセンシング技術を理解する上で必要な、「センサー」について紹介していきます。
Contents
センサーについて
センサーとは?
「センサー」は、言い換えると「検知器」になります。対象物の有無を検知したり、物理量を数値として測定したりする重要な役割を担っています。
センサーは種類によって測定対象の様々な情報(位置・速度・温度・圧力・形状など)を正確に収集し、それらのデータをもとにロボットがどのような動作を行うべきかの判断材料を提供します。

自動化における「五感」の重要性
人間が作業を行う場合、無意識のうちに五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)を使って状況を判断し、適切な行動を取ります。これはロボットにおいても同様で、製造ラインで人間に代わる作業を行うために、この五感に相当するセンシング機能が不可欠です。
ロボットにおける五感とは、例えば「ここまで移動し、この位置で正確に停止する」「この状態を検知したときは、次の工程に進む」「異常を感知したら直ちに安全停止する」といった、細かな命令を指します。
この命令の基盤となるのが、まさに「センサー」から得られる情報なのです。

効率化と安全性の追求
重要なのは、ただセンサーの存在を”知る”だけではありません。
センサーを効果的に活用して、製造工程の「効率化」と「安全性」を極限まで追求することこそが、現代の自動化システムに求められる本質的なセンシング技術です。
効率化の観点では「無駄な動作の削減」「タクトタイムの短縮」「品質の安定化の実現」などが挙げられ、安全性の観点では「作業者の安全確保」「設備の保護」「予期しない事故の防止」などが挙げられます。
ロボットに組み込まれるセンサーについて
エンコーダー
エンコーダーは、ロボットの各関節部に内蔵されている位置検出センサーです。機械的な移動量や回転角度を高精度で検出し、それらの情報を電気信号として出力します。
主な機能:
- ロボットアームの現在位置を常時監視
- 目標位置との偏差を計算してフィードバック制御を実行
- 累積誤差の補正による高精度動作の維持
現在どの位置にロボットのアームがあるのかを常にセンシングし、リアルタイムで出力・フィードバックすることで、安全かつ高精度な動作制御を実現します。ロボットが持つ±0.02mm以下という驚異的な位置精度は、このエンコーダーの技術によってもたらされます。
加速度センサー・ジャイロセンサー
加速度センサーは物体の動き出しや停止・傾き・振動を検出し、3次元空間における姿勢の変化を正確に測定します。回転方向の検出や姿勢の変化を測定するジャイロセンサーと組み合わせることで、より高精度な姿勢制御を実現します。
主な機能:
- 高速動作時の振動抑制制御
- 動的バランス制御による安定動作
- 外部からの衝撃検知による安全停止
ひずみセンサー
ひずみセンサーは、応力や圧力、荷重などロボットに加わる力を精密に感知するセンサーです。
導電体の抵抗が伸び縮みに応じて変化する性質を利用した「ひずみゲージ式」をはじめ、光の伝搬特性がひずみで変化することを利用した「光ファイバー式」、半導体のピエゾ抵抗効果を利用した「半導体ひずみゲージ」と様々な方式が存在します。
電流センサー
電流センサーは、ロボット内部の回路を流れる電流値を常時監視し、電子機器の保護やモーター制御などを行う目的で使用されています。
主な機能:
- 過電流検出による設備保護
- モーター負荷監視による予知保全
- 消費電力最適化による省エネ運転
自動化システムで活躍する外部センサー
画像センサー
CMOS技術を駆使した画像センサーは、光の強さや色を受光素子で捉え、デジタル画像データとして出力します。
出力された画像データを高度な画像処理アルゴリズムで解析することで、品質管理の自動判定や作業指示の生成を行います。
自動化における検査システムや認識システムの中核技術として広く採用されています。
使用用途:
- 品質検査における、表面欠陥や微細なキズ、異物の検知
- ロボット制御における、ピッキングやアライメントのリアルタイム制御

位置検出センサー
幅・厚さ・寸法・位置などの物理量を計測する際に使用される重要なセンサーです。
ロボットが動作する際は、必ず対象物(ワーク)が存在します。その対象物を正確に認識し、対象物の形状・寸法・位置・距離などを精密に測定するのが位置検出センサーの役割です。
自動化システムでは必ずといっていいほど使用されている基幹センサーであり、前述のエンコーダーも位置検出センサーの一種として分類されます。
RFIDセンサー
電波技術を利用し、遠隔でタグ情報を読み取ることで物体の識別・追跡を可能にするセンサーです。
同時に、温度・湿度・圧力・振動などの環境情報を計測することで、対象物や作業環境の状態を総合的に把握することが可能です。
自動化システムでのセンシング技術の活用事例
では、ロボットが活躍している自動化ラインでは、具体的にどのようなセンサーが使われているのでしょうか。実際の製造現場で見られる代表的なセンサーの活用例をご紹介します。

スイッチセンサー:基本中の基本を自動化ラインで使う
単純でありながら、最も確実な検出を行うセンサーがスイッチです。
「リミットスイッチ」と呼ばれる接触式のスイッチは、搬送物が所定の位置に到達したことを検出すると、決められた動作を確実に実行します。
その他にも部品の有無を判別したり、位置決め確認や安全装置としての役割など、多岐にわたって使用されています。スイッチは比較的安価でありながら高い信頼性があるため、自動化システムの基盤として欠かせない技術となっています。
なお、スイッチは接触式以外にも、光や磁気、静電容量を利用した非接触式スイッチが存在します。
ワーク検出センサー:対象物認識の高度化
加工対象物(ワーク)は、自動化ラインでロボットが処理する中心的存在です。ロボットは加工対象物を正確に検知し、「掴み→搬送→加工」という一連の動作を行います。
加工対象物を検出するためには、カメラを使ったセンサーや位置検出センサーが使用されるのが一般的です。
カメラを使った画像センサーは、立体的に対象物を検出できるため高価になりますが、精度の求められるシステムに多く使用されています。位置検出センサーはレーザー検出により、簡単な対象物の有無を判断する際に使用され、比較的安価に導入が可能です。
距離センサー:安全と精度の両立
自動化ライン構築において、ロボットと加工対象物の正確な位置関係の把握は、精密な動作と安全性確保の観点からも極めて重要です。
距離センサーは、レーザー光や超音波を使って対象物の位置・距離・大きさなどを瞬時に判断し、ロボットに最適な動作指令を与える重要な役割を担っています。
まとめ
センシング技術は、今やロボットを動かすためだけの手段に留まりません。自動化技術をより進化させ、国内製造業の競争力を大きく高める戦略的な技術です。
今後は、AI技術やIoT技術との融合により、さらに高度なセンシング技術やシステムが登場する可能性が大いに考えられます。将来、この新たな技術を効果的に製造現場に落とし込むためにも、センシング技術の基礎から応用まで、幅広い知識の理解を深めていくことが重要です。