油仕様 超精密ワイヤー放電加工機「M25LP」

西部電機が提供する、油仕様の超精密ワイヤ放電加工機「M25LP」。
同社は「マスプロ生産では実現できない手づくりによる商品」を掲げ、1972年に世界初のCNCワイヤーカット放電加工機の開発に成功。その後も数々の機能を搭載した高生産性・高精度のワイヤ放電加工機をシリーズ化し、製造現場の生産性向上という課題解決に貢献しています。
そして、リードフレームやモーターコアなどの金型から電子部品、医療関係部品など様々な微細加工に適した油仕様の超精密ワイヤ放電加工機「M25LP」が開発されました。
今回は最新技術を融合し、高い加工精度を実現した超精密ワイヤ放電加工機「M25LP」をご紹介します。
Contents
特徴
製品規格
超精密ワイヤ放電加工機「M25LP」【標準仕様】
X軸ストローク | 250mm |
Y軸ストローク | 250mm |
U軸ストローク | ±35mm |
V軸ストローク | ±35mm |
Z軸ストローク | 200㎜ |
最大加工物寸法 | 270×270×100mm |
工作物最大重量 | 150kg |
最大テーパ角度 | ±10°/100mm |
使用可能ワイヤー径 | φ0.05~φ0.20mm(OP:φ0.05) |
加工液総容量 | 330L |
加工液 | 油(第4類第3石油類) |
機械寸法 | 1,770×2,040×2,018(mm) |
加工テーブル形状 | ロの字型絶縁テーブル(分割構造) |
設置床面積 | 2,470×3,200(mm) |
総重量 | 3,100kg |
超精密ワイヤ放電加工機「M25LP」のCNC制御装置には「SmartNC(スマートエヌシー)」を搭載。

21.5インチの大画面マルチタッチパネルを備えた「Smart NC」は、見やすいグラフィックとスマートフォン感覚の操作インターフェイスで構成。誰でも「わかりやすい」「使いやすい」を体感できる仕様となっています。
機能面は作図や加工条件の設定、編集機能はもちろんのこと、加工の進捗をリアルタイムで確認する機能を標準で搭載。さらに作業者の作業効率を上げるために「SO-Assist」や「CC-Support」といったサポート機能も充実しています。
「SO-Assist」は、プログラムの入力から実加工までを適切な工程に沿ってアシストしてくれるため、初心者や改めて操作を確認したい場面で効果を発揮する機能です。「CC-Support」は、寸法/タイコ/コーナだれ/アプローチ傷/段差傷に対する加工条件の調整をする機能として製造現場サポート。調整したい項目をメーターで設定するだけと、非常に簡単な操作で加工条件の調整を可能にします。


さらにオプションの「CAM-Station」では2D CAD/CAMと3D CAMの機能を搭載させることができ、データの作成から加工までのフローを一気通貫で行うことができます。
伝統の技と最新技術の融合
同社は世界で初めてCNCワイヤ放電加工機を開発した先駆者としてのプライドをかけて、超高精度の機械づくりを行っています。
その超高精度を実現する技術の一つが、”きさげ”です。
“きさげ”とは、手作業で金属表面をわずかに削り取る仕上げ技術で、一枚刃の工具を使用して「押す」または「引っ搔く」ことで高い精度の面を創りだすことができる手法です。”きさげ”作業は古くからある金属加工法の一つであり、職人による手作業で機械加工よりも精密な平面度を実現できることから、高精度の工作機械製造には不可欠な技術です。
同社ではワークテーブルやリニアガイド等の取付面に”きさげ”を施すことで、通常の機械加工では再現することが困難な1μm以下の平面度を実現しています。
実は、”きさげ”を施していない一般的な取り付け面には、目に見えない数μm単位の凹凸が存在します。
目に見えない凹凸が存在する面同士を合わせる場合、ボルトなどによって強制的に合わせることは可能ですが、時間が経つにつれて合わせた面に負荷が掛かり続けます。この負荷が徐々に変形する原因となってしまい、最終的には初期制度の悪化につながってしまいます。
一方、”きさげ”を施した面合わせではボルトで固定した状態でも凹凸同士が重なることで起こる負荷を抑制することができます。これにより精度変化が極めて起こりにくくなり、同社のワイヤ放電加工は長期間にわたり高精度を維持することが可能となります。


ワイヤ放電加工機のパイオニアが拓く、サブミクロンの超精密加工
油仕様の超精密ワイヤ放電加工機である「M25LP」は、水仕様に比べ極小なバルスを制御できることによって、サブミクロン単位の面粗さを実現しています。


また、水仕様のワイヤ放電加工機と比較して超硬材料でのコバルト流出が無いため防錆に大変優れており、さらに鉄材では表面の軟化層が形成されないといった特徴を持っています。


そして加工電源には「MPSC-20」が搭載され、極間の浮遊容量を極限まで低減することにより加工精度が向上し、最良面粗さRa0.03μm、Rz0.2μmを実現しています。
■最良面測定結果

【測定条件】
算出規格:JIS-01規格 測定種別:粗さ測定 測定長さ:1.25㎜ カットオフ波長:0.25㎜ 測定倍率:×5K 測定速度:0.06㎜/s 材質:WC ワイヤー径:0.20 最良面粗さ:Ra0.03μm、Rz0.2μm
さらに油仕様がもつ特性を合わせることでコーナー制御が格段に向上。微少円弧コーナーを最適に制御できるため形状精度±1μmを安定して実現します。
また、「MPSC-20」は加工精度を向上させるほかにも電力やワイヤー消費量を削減する効果も併せ持ち、従来電源と比較して電力消費を約20%、ワイヤー消費量を約25%それぞれ削減することが可能となります。フィルタの消費量やイオン交換樹脂等を含めたトータルのコストも約20%の削減となり、省エネかつ低ランニングコストでの稼働を実現しています。
PRポイント
超精密の領域、±1μmの加工精度を実現した加工事例
超精密ワイヤ放電加工機「M25LP」は、油加工によるワンランク上の高い精度と品質を実現しています。
【リードフレームの加工事例】


ワーク:超硬(KD20) 板厚:5㎜ 使用ワイヤー径:Φ0.05 加工時間:50分/個 加工回数:9回 面粗さ:Ra0.05μm、Rz0.39μm
【コネクターの加工事例】


ワーク:超硬(KD20) 板厚:5㎜ 使用ワイヤー径:Φ0.05 加工時間:50分/個 加工回数:9回 面粗さ:Ra0.05μm、Rz0.37μm
【微細ギアの加工事例】

ワーク:超硬(RG3) 板厚:15㎜ 使用ワイヤー径:Φ0.05 加工時間:6時間 加工回数:9回 面粗さ:Ra0.05μm、Rz0.38μm
超高精密加工を長時間維持する機能
「M25LP」が誇る超高精度加工を長時間維持する、NCによる熱変位補正機能「サーマルアジャスト24」もポイントです。この機能は、ワイヤーを保持する上ヘッドと下ヘッドの温度変化による変位量を監視・検出し、検出した結果をもとに上ヘッドに補正を加えることでワイヤー垂直精度を維持します。
機体内部のコラムや中間槽、ベッドスペースなど計4箇所に設置された温度センサーは、室温や液温、機体温を計測します。測定結果は随時NC装置に転送され、NC装置側で計測データを元に熱変位量を推定し、機械の熱変位による変動を打ち消すように駆動軸(V軸、Y軸)を制御します。この制御によって、常時(24時間)ワイヤー垂直精度とピッチ精度を維持します。

実加工によるテストでは、仕上げ加工開始から20時間以上かかる角穴21個の加工で、室温を3℃変化させV軸倒れ量を確認。その結果、サーマルアジャスト24を無効にした時には3.2μmあったワイヤー垂直誤差が有効時では1.1μmにまで低減し、ワイヤー垂直誤差をおよそ65%改善しています。
LP仕様の自動ワイヤー供給装置 AWF-4
同社の自動ワイヤー供給装置は、断線点供給の先駆者としての高い評価と30年以上にわたる実績に裏付けされた技術によって、ワイヤ放電加工機の自動無人運転に大きく貢献しています。
ワイヤ放電加工機のノンストップオペレーションを実現させるため、1981年より一貫して「アニールドライ方式」を採用しています。近年はローラを固定させず定位置でアニールする機能を開発しており、ワイヤー供給確率を高めることで稼働率の向上と自動化を実現する機能に仕上げています。

機能面では、断線点でも確実にワイヤー線の供給を可能にし「コア・ステッチ加工」の必須機能となる断線点供給機能、ワイヤー先端に振動を加え微細動させることで狭ピッチ小径ホールや加工スリットへの挿入を可能にする特許技術「フリクションセンサ」機能を搭載。
またAWF-4新ワイヤー走行系は、ワイヤーのテンションを改良することでワイヤー走行時のテンションの安定と振動低減を実現しています。
テンションの安定性と振動幅減少を検証したグラフでは、従来型はワイヤーにかかるテンションにブレが生じており、振動幅においても若干の振動が発生しています。しかし最新型ではワイヤーに掛かるテンションは非常に安定しており、振動幅もほとんど発生していません。これにより加工精度をさらに向上させています。
コア・ステッチ加工
同社製ワイヤ放電加工機の大きな特徴である「コア・ステッチ加工」は、ワイヤ電極線の真鍮を溶着させながら加工を行い、中子を保持する機能です。切り落とし加工の必要がなく簡単に中子を処理することができ、切り落とす際には軽く叩くだけと非常に簡単です。
従来の方法で問題となっていた工程数の削減や作業ミスの撲滅、単純作業からの解放といった課題を解決することができます。さらに切り落としに箇所のプログラムが不要となるため、NCプログラムを簡素化させることができ、実際の加工にかける時間を最大化させることが可能です。
ワイヤ放電加工機の稼働率を激変させる画期的な機能として、自動化率が格段に向上します。

安定した超精密加工を実現する、油仕様の超精密ワイヤ放電加工機「M25LP」。
“きさげ”や自動ワイヤー供給装置といった高精度を実現する技術に加え、その高精度を長期にわたり維持する「サーマルアジャスト24」などにより、微細加工ユーザーが求める機能性を提供します。
高精度かつ長期的な精度維持ができるワイヤ放電加工機の導入をご検討の際は、ぜひチェックしてみてください。
【西部電機の水仕様ワイヤ放電加工機の製品レビューはこちら】