設備投資を「リース」するという選択。仕組みやメリット・ポイントを徹底解説。

本コラムをご覧になっている皆さんが設備導入を検討する際、資金調達の方法として真っ先に思い浮かぶのは「金融機関からの融資」ではないでしょうか。

10年間にもおよぶ金融緩和政策により、これまで貸出金利は非常に低い水準で推移してきました。
さらに新型コロナウイルス感染拡大時には実質無利子・無担保で融資が受けられる、いわゆる「ゼロゼロ融資」も行われました(現在はこのゼロゼロ融資の返済が始まり、倒産件数の増加が懸念されています)。

現在も日銀トップの交代や米国の金利上昇もあり、大規模な金融緩和政策を維持する方向で進んでいましたが、最近、若干方向性が変化しそうな気配です。

一般的には金融機関から融資を受けて設備投資、という方法がベストのように思われますが、リース会社を活用した設備投資も見逃せません。実は、金融機関における大口の貸出先は以前から「電力会社」と「リース会社」が非常に大きな割合を占めています。リース会社は企業に対してリースを利用した設備投資をサポートしていますが、大口の貸出先であるリース会社は金融機関から低金利で資金を調達することができるため、リース会社を利用する企業側にとってもお得なリース料(リース料率で表すこともあります)で必要な設備投資を行えるというわけです。

普段、何となくは理解していながらも、その実態はなかなか理解しきれていない点も多い「リース」という仕組み。本コラムでは、この「リース」をわかりやすく、しっかりと解説していきます。

リース会社からの設備調達

リース会社は資金調達(ファイナンス)に絡むいろいろな業務をしていますが、新規の設備投資における資金調達に絞ると「リース契約」「割賦販売契約」の2種類が存在します。

2つの契約形態の違いはこのようになります。

契約形態リース契約(賃貸借契約)割賦販売契約(分割払契約)
月額支払名目リース料割賦金
支払名目に含まれる原価物件代金
金利
動産総合保険料
固定資産税
物件代金
金利
動産総合保険料
物件の所有者リース会社

ユーザ
(但し、割賦金の完済までは
リース会社が「所有権留保」している)

大きな違いは「物件(設備)の所有者」です。
リースの場合、導入する設備の所有者はリース会社となり、割賦販売(分割払い)の場合はユーザ(完済するまではリース会社の留保)となります。

このことから、リースというのは「導入したい設備をリース会社に代わりに買ってもらい、利用料を支払って長期間貸してもらう」仕組みだと理解できます。工作機械のような大型の設備だけでなく、営業車やコピー機といった比較的身近な設備の導入にも実はリースが活躍しています。

ちなみに、リースと似た仕組みとして「レンタル」がありますが、こちらは「レンタル会社がすでに保有している物件を、利用料を支払って短期間貸してもらう」というものです。DVDレンタルなどがまさにその代表ですね。

もう1つの違いは「支払名目に含まれる原価」です。
リースには固定資産税が含まれますが、割賦販売には固定資産税が含まれません。割賦販売契約の際は、固定資産税をユーザ自身で申告・納税する必要があります。

優秀すぎる!リース会社の「動産総合保険」

リースの際に注目したいのは、リース会社が掛ける「動産総合保険」です。
偶発的な事故や自然災害によって機械や備品が受けた損害を保証してくれるというものですが、この保険、実はかなりの優れものです。

「動産総合保険」は機械設備でよく発生する「取扱い不注意による事故」「誤動作による破損」「落雷」などだけでなく、「台風・暴風雨・豪雨による洪水や砂崩れ等の水災」「台風・暴風等の風災」なども保証の対象となっています(自然災害で保険免責(対象外)になるのは地震、または地震に起因する津波や噴火などです)。かなり適用範囲の広い保険であると言えるでしょう。

さらに、保険料にも大きな秘密があります。

リース会社はユーザとリース契約または割賦販売契約(基本的にはどちらの契約形態でも保険は同じ)を結び、数年にわたってユーザから利用料を得るわけですが、その間リース会社は対象の物件に保険を掛けています。驚くのはその金額で、リース会社大手10社を個々に見ても年間の保険金額は数千億円から数兆円になります。これがずっと続くため、損害保険会社にとってリース会社は超大口の顧客です。

こうした背景があるので、リース会社で加入する際の保険料は非常に割安です。ユーザ自身が保険代理店と交渉するよりも遥かに安いと想像できます。

さらに、損害保険の契約は基本的に1年単位で更新となり、加入期間中に事故が起きて保険金の支払いが発生すると翌年は保険料が高くなるのが一般的です。リース会社も損害保険会社との間で年1回の保険料見直しがありますが、すでに契約している保険については「(事故が発生して)保険料が上がったので、月額のリース料が上がります」とは言いません。いずれの契約でも毎月同額が大前提です

つまり、契約の途中にユーザ側で事故が発生し、保険金が支払われても契約満了まで月額のリース料は変わらないということです。リース期間中に事故が発生した場合、修理で直る場合は修理費(残っているリース料の範囲内であることが前提)を保険金で受け取りそのまま継続して使用、全損の場合は残っているリース料程度の保険金を受け取って対象物件のリース契約が終了となります。

リース会社との契約期間が終わったら「再リース」

リースで導入した機械を、リース期間が満了した後もそのまま使用したい場合はどうすればいいでしょうか。

通常は「再リース契約」をすることでそのまま使用できます。
契約は1年ごとの更新で、再リース料は当初のリース期間中に支払っていたリース料の1/10程度が一般的です。また、再リースは何回更新しても再リース料は同額です。

例えば、通常のリース契約で月額100,000円(税別)のリース料を支払っていた場合、
再リース料は「月額100,000円×12か月÷10=120,000円(1年間)」となります。

再リース時の保険については保険を掛けているリース会社と掛けていないリース会社がありますので、再リース期間中も保険が付いているリース会社と契約した方が安心度は高いと言えます。再リースの場合も保険は前述したとおりの設定となっており、保険が掛かっているからといって再リース料が高くなることはありません。

いいことばかりのように見える再リースですが・・・気をつけておくべきポイントもあります。

工作機械は長期間使用できるので、リースや借入金の返済終了後こそがユーザにとって本格的に儲ける期間、いわゆる「機械に稼いでもらう」期間になります。ですが、最初のリース契約時に特段の取り決めがない場合、ユーザはその後も延々と再リース料を払い続ける必要があります。ユーザからすると、一向に支払いが終わらないという感覚になるかもしれません。

そこで最近では、最初のリース契約時にあらかじめ再リースの回数を決めておき、「〇回(年)再リースしたら、その後再リース料1回分でユーザへ売却」と取り決めるケースが多くなっています。

ただし、リース契約上の定義の問題もあり、リース契約および再リース契約時には所有権移転の旨を契約書内に記載することができません。そのためリースの見積書の欄外に「再リース〇回(年)後、同1回分にて売却」と記載しているケースが多いようです。

資金調達方法と政策・税制との関係

資金の調達方法とそれに伴い適用可能な補助金や優遇税制についてまとめました。

金融機関融資リース契約
(リース会社)
割賦販売契約
(リース会社)
補助金対応


一部の補助金でリース会社との共同申請可
即時・特別償却への
対応
(現状2025/3月まで期限あり)



(ユーザ)
中小企業等経営強化
法内の税制特例の
申請・認可・実施

ユーザの
所有物ではない



(ユーザ)
中小企業等経営強化
法内の税制特例の
申請・認可・実施
固定資産税減免への
対応
(現状2025/3月まで期限あり)

(ユーザ)
中小企業等経営強化法内税制特例の申請・認可・実施




(ユーザ申請・認可、リース会社がリース料を均等分割減額)
中小企業等経営強化法内の設備投資に関する固定資産税特例の申請・認可・減免納税





(ユーザ)
中小企業等経営強化法内の設備投資に関する固定資産税特例の申請・認可・減免納税
(もともと契約に固定資産税は入っていません)
ESGリース




















●リース料の1~4%の補助金(対象機械かどうか認定リスト検索)
●リース会社がESGの体制をしっかり取っている場合+1%
●ユーザがISO14001を取得していれば+1% など
※扱っていないリース会社、補助率の低い/高いリース会社あり(ESGに対する姿勢の良し悪しで認定)



















リース会社を選ぶポイント

リースを使った設備投資をさらに有利に進めるなら、以下の2点がポイントです。

●2社以上のリース会社に声を掛け、競争させることで月額リース料や月額割賦金がお得になる可能性
 が期待できます。

●ユーザのメインバンク直系のリース会社との契約は、良い面・悪い面の両方が存在します。

【良い面】
金融機関の直系リース会社は、親銀行から「ユーザの経営状態や将来の取引姿勢」などの情報を何らかの形で入手しやすいので、審査の結論・方向性が出るのが早い傾向にあります。

【悪い面】
メガバンク系リース会社を除けば、リース会社は親となる銀行と一体の関係にあるため「親銀行の融資残+直系リース会社の取引残」を合算して見る傾向が強いです。

「グループ全体でお取引枠は一杯である」と判断されたら今後の運転資金等の調達に影響を及ぼす可能性もあるので、場合によっては取引している金融機関の系列ではないリース会社の方が有利になることがあります。工作機械の商社・販売店はリース会社とのネットワークもあるため、お付き合いのある機械商社や販売店にリース会社を紹介してもらうのも1つの方法かもしれません。

リースを利用した設備投資には、実はあまり知られていない様々なメリットがあります。
自己資金や金融機関からの融資だけではなく、第3の選択肢としてリースを賢く利用した設備投資も非常に効果的と言えるのではないでしょうか。